働き盛りの資産形成:デジタル金投資「見えない価値」を掴む

投資・副業

はじめに

現代社会は、先行きの不透明感が増し、経済的な不安が常に付きまとっています。インフレの進行、地政学的なリスク、そして市場の激しい変動。このような状況下で、私たちが築き上げてきた資産をいかに守り、増やしていくかは、30代から50代の働き盛りの男性にとって、切実な課題と言えるでしょう。株式や債券、不動産といった伝統的な投資対象に加えて、今、改めて注目を集めているのが「金(ゴールド)」です。

金は古くから価値の保存手段として認識され、有事の際にはその真価を発揮してきました。しかし、金投資と聞くと、現物購入のハードルや保管の煩わしさを想像する方も少なくないかもしれません。しかし、2026年現在、テクノロジーの進化と金融サービスの多様化により、金投資はかつてないほど身近なものになりつつあります。

今回は、シンガポールで始まった画期的な金投資サービスを例に、働き盛りの男性が金投資を自身の資産形成戦略にどう組み込むべきか、その「見えない価値」と賢い活用法を深掘りしていきます。

シンガポールの新潮流:デジタル銀行が拓く少額金投資の世界

2026年1月、シンガポールのデジタル銀行であるMariBankが、画期的な金投資サービス「Mari Invest Gold」を開始しました。このニュースは、金投資のあり方を大きく変える可能性を秘めています。なぜなら、このサービスではわずか1シンガポールドル(日本円で約100円程度)という少額から、物理的な金に投資できるからです。

参考記事:MariBank Launches S$1 Physical Gold Investment Fund for Singapore – The Fintech Times

MariBankは、オンラインショッピング大手Sea Limitedのデジタル銀行子会社であり、この取り組みはシンガポールのデジタル銀行としては初めての試みとなります。その目的は、これまで敷居が高いと思われがちだった金投資へのアクセスを、誰もが手軽に行えるように「民主化」することにあります。

この「Mari Invest Gold」ファンドは、純度99.5%以上の物理的な金地金に投資し、それらはシンガポール国内の安全な金庫に保管されます。保管業務はスタンダードチャータード銀行シンガポールが担当し、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の金価格AMを指標として運用されます。つまり、投資家は複雑な現物取引や保管の手間を負うことなく、デジタル上で手軽に物理的な金に投資できるのです。

MariBankは既に、MAS(シンガポール金融管理局)債や高品質債券ファンドに投資する「Mari Invest SavePlus」で11億3500万シンガポールドル(約1200億円)以上の資産を運用し、さらに月次配当を提供する「Mari Invest Income」も資産規模を10倍に拡大させています。顧客の約30%が少なくとも1つの投資商品を利用しているという実績は、デジタル銀行が提供する投資サービスへの信頼と需要の高まりを示しています。

なぜ今、金投資なのか?「見えない価値」としての金

MariBankの事例は、金投資がテクノロジーによって進化し、より多くの人々に開かれつつあることを示しています。しかし、そもそもなぜ今、金投資が注目されるのでしょうか。それは、金が持つ「見えない価値」が、現代の経済状況において特に重要性を増しているからです。

インフレヘッジとしての機能

私たちが日々実感しているように、物価は上昇し続けています。これは、現金の価値が時間とともに目減りしていくことを意味します。このようなインフレ環境下で、金は古くから「インフレヘッジ」としての役割を果たしてきました。紙幣と異なり、金は政府や中央銀行の政策に左右されず、その供給量も限られています。そのため、紙幣の価値が下がる局面では、相対的に金の価値が上昇しやすい傾向があるのです。

あなたの給与が上がっても、それ以上に物価が上昇すれば、実質的な購買力は低下します。金は、こうした「見えない価値の減少」から資産を守る盾となる可能性があります。

地政学的リスクや経済不安時の安全資産

世界中で紛争や政治的な不安定要素が増え、経済の先行きが不透明な時代において、金は「安全資産」としての地位を確立しています。株式市場が大きく下落したり、特定の国の通貨が急落したりするような「有事」の際には、投資家はリスクの高い資産から資金を引き揚げ、金のような安全な資産に資金を移動させる傾向があります。

これは、金が普遍的な価値を持ち、どの国でも通用する国際的な資産であることに由来します。あなたのポートフォリオに金が組み込まれていれば、予期せぬ経済ショックが起きた際にも、資産全体の変動を和らげるクッションとなるでしょう。

株式や債券とは異なる値動き

金は、株式や債券といった他の主要な資産クラスとは異なる値動きをする傾向があります。一般的に、株式市場が好調な時は金価格は下落しやすく、逆に株式市場が不調な時は金価格が上昇しやすいと言われます。これは、金が「リスクオフ(リスク回避)」の資産と見なされるためです。

このような相関性の低さは、ポートフォリオ全体の分散効果を高める上で非常に重要です。異なる値動きをする資産を組み合わせることで、特定の資産が大きく下落しても、他の資産がその損失を補う可能性があり、全体としてのリスクを低減できるのです。これは、資産形成において「見えないリスク」を管理する上で欠かせない視点と言えるでしょう。

より広範な資産分散の考え方については、過去の記事「働き盛りの資産形成:「見えない価値」を掴む「現実」投資術」でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

物理的な金投資のメリットとデメリット、そしてデジタル化の恩恵

金投資には様々な方法がありますが、MariBankの「Mari Invest Gold」のように「物理的な金」に投資するファンド形式は、現物保有のメリットを享受しつつ、そのデメリットを軽減できる点で注目に値します。

物理的な金投資のメリット

  • 現物資産としての安心感: 紙の証券やデジタルデータではなく、実際に存在する資産であるという安心感は大きいでしょう。金融機関が破綻しても、金の価値がなくなるわけではありません。
  • 信用リスクの低さ: 特定の企業や政府の信用力に依存しないため、信用リスクが低いとされます。
  • 通貨価値の下落に対する強さ: 無国籍通貨とも呼ばれ、特定の国の通貨価値が下落しても、金の価値は保たれやすい特性があります。

物理的な金投資のデメリット(現物保有の場合)

  • 保管コストと盗難リスク: 金地金や金貨を自宅で保管するには、盗難のリスクや、貸金庫などを利用する際の保管コストがかかります。
  • 流動性の問題: 現物を売却する際には、買い取り業者を探したり、鑑定に時間を要したりと、すぐに現金化できない場合があります。
  • 配当や利子がない: 金は株式のように配当金を生み出したり、債券のように利子を生み出したりすることはありません。そのため、キャピタルゲイン(売却益)を狙う投資となります。

デジタルファンドがデメリットを克服する

MariBankの「Mari Invest Gold」のようなデジタルファンドは、これらのデメリットを巧みに克服しています。

  • 保管コストと盗難リスクの解消: 投資家自身が金地金を保管する手間やリスクがなく、プロの管理下で安全に保管されます。
  • 高い流動性: デジタルプラットフォームを通じて、いつでも手軽に売買できるため、現金化のスピードが格段に向上します。
  • 少額からの投資: 従来の金投資では難しかった、わずかな金額から始められるため、投資のハードルが大きく下がります。

これにより、働き盛りの男性が、より手軽に、そして安全に金投資をポートフォリオに組み入れる道が開かれたと言えるでしょう。

個人が金投資を始める際の選択肢と賢いアプローチ

MariBankの事例は海外のサービスですが、日本でも金投資を始めるための選択肢は複数存在します。それぞれの特徴を理解し、自身の投資スタイルや目的に合った方法を選ぶことが重要です。

主な金投資の方法

  • 金地金・金貨(現物): 最も直接的な金投資です。一定量以上の金を購入し、自宅や貸金庫で保管します。金の価格変動だけでなく、為替変動の影響も受けます。保管や売却の手間がかかる点がデメリットです。
  • 金積立: 毎月一定額を積み立てて金を購入する方法です。ドルコスト平均法の恩恵を受けやすく、価格変動リスクを抑えながら長期的に投資できます。少額から始められる点が魅力です。
  • 金ETF(上場投資信託): 金価格に連動するように設計された投資信託で、株式市場を通じて売買できます。現物を保有する手間がなく、比較的少額から投資可能です。
  • 金投資信託: 金に投資する投資信託です。ETFと同様に手軽に始められますが、信託報酬などのコストがかかります。
  • 先物取引: 将来の特定の期日に、特定の価格で金を売買することを約束する取引です。レバレッジを効かせられるため大きな利益を狙える反面、リスクも非常に高いです。

働き盛りの男性が金投資をポートフォリオに加える意味

30代から50代の働き盛りの男性にとって、金投資は単なる投機ではなく、資産を守り、未来を築くための「守りの投資」として大きな意味を持ちます。

1. 分散投資の核として: 株式や債券中心のポートフォリオに金を加えることで、市場全体の変動リスクを軽減し、安定性を高めることができます。特に、経済の不確実性が高まる現代において、異なる動きをする金は、まさに「見えないリスク」に対する保険となり得ます。

2. 長期的な資産保全: 金は、歴史的に見て長期的に価値を保ち続けてきた資産です。インフレや通貨価値の変動から資産を守り、次の世代へと繋ぐための有効な手段となり得ます。

3. 心理的な安心感: 不安定な時代だからこそ、現物資産である金がポートフォリオに組み込まれていることは、投資家にとって大きな心理的安心感をもたらします。これは、冷静な投資判断を続ける上で非常に重要です。

金投資における注意点と賢いアプローチ

金投資は魅力的ですが、どのような投資にも注意点は存在します。賢く活用するためには、以下の点を意識しましょう。

過度な集中投資は避ける

金は分散投資の有効な手段ですが、ポートフォリオの全てを金に集中させるのは賢明ではありません。金は配当や利子を生み出さないため、資産成長の機会を逃す可能性もあります。一般的には、ポートフォリオの5%から10%程度を金に割り当てるのが一つの目安とされています。

市場の変動性を理解する

金価格も常に変動しています。特に短期的な値動きは、地政学的ニュースや金融政策の発表など、様々な要因に影響されます。短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。

コスト(手数料、保管料など)を意識する

金投資には、購入時や売却時の手数料、現物保管の場合には保管料などがかかります。これらのコストは、長期的に見れば投資リターンに影響を与えるため、事前にしっかりと確認し、できるだけ低コストな方法を選ぶようにしましょう。

自身の資産状況やリスク許容度に応じた配分

投資は、個人の資産状況、ライフステージ、そしてリスクに対する考え方によって最適な戦略が異なります。金投資を始める前に、ご自身の現在の資産状況や、どの程度のリスクなら許容できるのかをしっかりと見極めることが大切です。無理のない範囲で、着実に資産形成を進めることが成功への鍵となります。

まとめ

現代の不確実な経済環境において、金投資は、あなたの資産の「見えない価値」を守り、未来を築くための有力な選択肢の一つです。シンガポールのMariBankが提供するような少額からの物理的な金投資は、これまで敷居が高かった金投資を、より多くの人々に開かれたものにしました。

インフレヘッジ、安全資産としての機能、そして他の資産との相関性の低さ。これら金の持つ「見えない価値」を理解し、自身のポートフォリオに賢く組み入れることで、あなたは経済的な変動に強い、より強固な資産基盤を築くことができるでしょう。感情に流されることなく、冷静な目で「見えない価値」を見極め、確かな未来を築いていきましょう。

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